
以前住んでいたマンションで騒音に悩まされました。ある時、隣の家の人が叫んで暴れているようだったので、恐怖を感じて警察に電話しました。
アパートやマンションなど集合住宅で騒音問題に悩まされている人は少なくありません。
あまりにもひどい場合は警察に通報しましょう。
「危ない」と感じるときは迷わず通報すべき
理由を問わず、「危ない」と感じるときや犯罪の可能性が疑われるときには通報すべきです。
警察に通報するほうがよいケース
- 児童虐待の可能性がある
- 家庭内暴力(DV)の可能性がある
- 住人が奇声をあげていて薬物使用の可能性がある
- 住人が暴れて器物を破損している
- 事件や事故を目撃した など
騒音問題で通報するとなると、話が少し変わってきます。
警察に通報すればすべて解決とはいかない
警察に通報できることと、自分の思い通りに事態が解決することには違いがあります。「警察に通報すればすべて解決」とはいきません。
マンションの騒音を理由に警察へ通報したら、次の日から騒音問題が一気に解決!とはいかないことが多い。これが現実です。
なぜでしょうか?
「法律違反」がない限り警察は何もできない
基本的に、警察は「法律違反」がない限りはなにもできません。
もしあなたが「とにかく隣の部屋の騒音がすごいんです!暴れているんです!」と通報しても、いざ警察が隣の部屋を訪問したときに「気をつけて生活していますよ」と住人が言えば・・・そう、なにもできないんです。
もちろん、騒音の事実が確認されて、度重なる注意にも応じないとなると、いつか逮捕できることもあります。
でも、事実として騒音問題で警察の“踏み込んだ処分”は期待できません。
警察が来ることで抑制効果が期待できる?
警察が来ることで期待できるのは、「抑制効果」です。
「まずい・・・気をつけないと捕まってしまうぞ・・・」と思ってもらえたら、少なくとも次の日から音は少なくなるはずです。
通報することで相手が逆上する可能性もあります。
マンションの騒音問題で警察に通報する際には、その先の可能性を視野に入れるべきです。
どこに通報すればいい?110番?それとも交番?
いろいろ思い巡らせた上で通報することに決めたなら、どこに電話すればいいのでしょうか?
110番がいい
騒音問題で通報しようと決めたら、選択肢は2つあります。
- 地元の交番に電話する
- 110番
隣の部屋の人が暴れていたり、とにかく常識を超えるレベルの騒音が続くなど緊急性が高いときには110番に電話しましょう。
なぜでしょうか?
なぜなら、交番だと後回しにされるかもしれないからです。交番には警察官が何人も待機しているわけではありません。「そこまで緊急ではないな」「事件ではないな」と判断されたら、パトロールの“ついで”に寄ろうとするかもしれません。
一方で、110番に電話すると、司令室からかならずだれかを向かわせてくれます。対応が速いんです。
以前に私が経験したことを記事にしていますので、参考にしてください。
でも、110番なんてかけたことがないし、不安だな・・・と思うかもしれませんね。
実際にかけるかどうか別として、110番への通報方法を知っておくといいですよ。
110番への通報方法
試しに110番にかけてみて練習するわけにはいきませんので、この記事を通して「電話するとその後どうなるか」確認しておきましょう。
110番すると、こんなことを聞かれる
- 事件ですか、事故ですか、何がありましたか?
- それはいつですか?
- 場所はどこですか?
- 今どうなっていますか?どんな状況ですか?
- 犯人はどんな人(年齢・服装・人相など)ですか?
- あなたのお名前、住所、連絡先は?
「110番したらこんなことを聞かれますよ」ということを事前に知っていれば、回答を準備できますね。
騒音で110番するときの例
・何があったか?・・・「マンションの隣の部屋の住人が奇声をあげています」
・いつ?・・・「今から30分ほど前からずっとです」
・どんな状況?・・・「詳しいことはわかりませんが、時々奇声をあげます」
・どんな人?・・・「直接会ったことがないのですが、50代くらいの男性かと」
・あなたの情報は?・・・「私は〇〇です。私が通報したことは知られたくありません。」
匿名で通報することもできます。または、「隣の部屋の人には自分が通報したことを知られたくない」と知らせることもできます。
110番するときのポイントは、「単なる苦情にしない」ことです。通報すると決めたなら堂々と、はっきりと伝えましょう。
緊急性のない相談は警察以外へ
緊急性のない場合で騒音問題について相談したいときは、110番ではなく以下の3択になります。
- 管理会社(大家さんが直接管理しているなら大家さん)
- 警視庁の相談ホットライン「#9110」
- 弁護士
管理会社(大家さん)
すべての賃貸物件は、だれかが管理しています(と信じたい)。
大抵は大小は別としてアパート・マンション管理をメインにしている管理会社が、場合によっては大家さんが自分で管理していることも。
そもそも毎月管理費を払っているわけですし、ちゃんと管理してもらわないと困ります。
マンション管理会社の仕事内容
- 設備等の保守点検
- 共有部分の清掃
- 住民への連絡事項の伝達
- 緊急対応
- 住人同士のトラブルへの対応
管理会社には、騒音問題を含めて住人同士のトラブルへ対応する務めがあります。
では具体的にどのように相談したらいいのでしょうか?
管理会社への相談方法
管理会社へ連絡する前に、伝えるべき情報を整理しておきましょう。
騒音について相談する場合、以下の点を明確に伝えるとよいです。
- いつ(時間帯)
- どのような音が
- どれくらい続くのか(頻度や1回の騒音が続く長さ)
- 騒音源がどこか心当たりがあるか
たとえば、
「ほとんど毎日、夜の10時過ぎから日付が変わるあたりまで、隣の部屋の人が壁を殴るような打撃音が響いてきます。眠れないので大変迷惑しています!対応お願いします。」
このように伝えることができます。
管理会社の対応例
具体的に伝達したら、管理会社はどんな対応を取ってくれるのでしょうか?
結論から言えば、対応は管理会社によって異なります。
直接“騒音源”と思われる住人に注意してくれることもあれば、「わかりました」というだけでなにもしてくれないところもあります。
よくある対応は、「注意喚起のチラシ配布」です。「騒音源が特定できないため、各戸に配布しています」という前提のもと、「最近〇〇のような苦情が寄せられています。集合住宅であることを意識して、十分に注意してください」という内容のチラシをすべての部屋に投函します。そして掲示板にも張り出します。
騒音源と思われる人が「自分のことだ」とハッとして止めばいいのですが・・・なかなかそうはいかないほうが多いでしょう。
警視庁の相談ホットライン「#9110」
警視庁の相談ホットライン「#9110」をご存じでしたか?
悩みごと・心配ごとは警察相談ダイヤル 電話:#9110へ
多岐にわたる相談を総合的に受け付け、相談内容に応じて窓口などをご案内します。引用:警視庁公式ページ
とにかくダイヤルすれば、ふさわしい窓口へ電話をつないでくれます。
このダイヤルでは、騒音問題を含め、集合住宅に住むときに経験するさまざまなトラブル、生活上の安全に関係する困りごとの相談を受け付けています。希望すれば匿名での利用も可能です。
電話口で警察安全相談員が対応方法・対策についてアドバイスしてくれます。内容から悪質性が確認されるケースでは、警察の方から該当者に指導や警告を与えてくれることもあります。
弁護士
マンションの騒音トラブルを弁護士に相談することができます。
が、個人レベルでの騒音トラブルで弁護士に相談するのはおすすめできません。なぜなら費用がかさむからです。
弁護士にできること
- 騒音問題について、法的な観点のアドバイスを与える
- 相手方との話し合いに専門家として同席する
- 民事訴訟の手続きをする
「いくらお金がかかっても関係ない!」というケースを除き、最初から弁護士に相談すると費用の負担が大きすぎます。
例外もあります。同じ騒音問題で多くの住人が困っていて「集団訴訟」を検討しているようなケースでは有効です。
直接苦情を言うときは慎重に
相手に直接苦情を言ってやろう!
そんな気持ちになるのは重々承知で、ちょっと深呼吸して冷静に考えてみましょう。
相手方に苦情を“言う”方法
- 直接訪問して伝える
- 壁を叩いたり天井を突いたりして伝える
- 手紙を投函する
ブログ記事などを読んでいると、「直接文句を言ったら静かになりました」などの成功例が載っています。
ときには成功するかもしれませんが、反対の結果になることもあるので注意が必要です。相手が逆上して何をしてくるかわかりませんし、腹いせに以前よりも騒音がひどくなることもあり得ます。
最悪の場合、反対にあなたのほうが「騒音がひどい」と言われて攻撃されることも。
直接アプローチすべきかどうか、どうぞ慎重に考えてください。
結局のところ、ここまでの内容をまとめると、
マンションの騒音で警察に相談することができます。
管理会社、警視庁の相談ホットライン「#9110」、弁護士も活用できます。
自分で直接伝える方法もあります。
とはいえ・・・
どの方法を取っても「確実に解決する」わけではありません。
絶対に騒音問題を解決させたい!
意地でも決着をつけたいときは、他にいい方法があるでしょうか?
被害届の提出や裁判を視野に入れるなら
意地でも解決に持っていきたいときは、警察への被害届の提出や裁判を検討することができます。
被害届を出す
被害届は、犯罪の被害に遭った人が「捜査して!」と警察に提出するものです。
被害届に記入する項目(警察官が書いてくれます)
- 被害者の情報(氏名・住所・職業・年齢)
- 被害があった日時
- 被害があった場所
- 被害状況
- 被害金額や品
- 犯人の情報(氏名・住所・職業・年齢)※不明の場合はなし
- その他、参考となる事項
被害届を出しておくと、今度問題が発生したときに通報しやすくなりますし、犯罪と認められれば相手が逮捕されます。
裁判を起こす
騒音問題で訴訟を起こし、勝訴を目指すことができます。
個人で訴訟を起こすこともできますが、たいていは弁護士に依頼することになります。
最近の判例を見ると、騒音の事実が証明されるケースについては勝訴を勝ち取れるケースが見られます。
被害届も裁判も「騒音の証拠」を確保するのがポイント
被害届を提出して犯罪として扱ってもらうときも、裁判を起こして損賠賠償を求めるときも、カギとなるのは「騒音の証拠」です。
でも、騒音の証拠はどうやって集めたらいいのでしょうか?
騒音の証拠になり得るもの
- 状況のメモ
- 日記
- 騒音レベルの測定
主観ではなく、できるだけ状況証拠となることを意識した記録が必要です。騒音が発生した時刻や様子などをしっかり書き留めておきます。
騒音レベルの測定には機器が必要です。
騒音調査というサービスがある
騒音レベルを測定するためには「騒音調査サービス」を活用できます。
騒音測定器の貸出や調査員の派遣、測定結果の分析、報告書の作成などを請け負ってくれます。
たとえばソーチョーのような会社です。
裁判外紛争解決手続き(ADR)
裁判以外で法的なトラブルを解決する方法の1つに「裁判外紛争解決手続き(ADR)」があります。
ADRでは、公正中立な第三者が当事者の間に入り、当事者双方の言い分をよく聴きながら専門家としての知見を活かしつつ、話し合いを通じて解決を図っていきます。
この場合の第三者とは、法務大臣によって認証された民間ADR事業者です。
ADRは、民事上のトラブルによく用いられます。金銭トラブル、土地の境界、離婚、相続、職場のトラブル、騒音問題などです。
ADRの手続きの一般的な流れ
- ADR事業者に申し立てを行う
- ADR事業者がADR手続きの開始について相手方に連絡する
- 相手方が合意したら、ADR事業者により選任された手続き実施者(調停人・あっせん人)が間に入って話し合いを行う
- 申立者と相手方の双方が合意すれば、ADR手続きは終了
申し立ての内容によっては、受理されないこともあります。相手方がADR手続きに応じないことがあります。その場合、ADR手続きは行われません。合意が成立しない場合、ADR手続きは不成立になります。
ADRに強制力はありません。和解合意書が作成されますが、判決のように強制執行されることはありません。

ただし、双方が同意して「仲裁判断」を受ければ強制執行が可能になります。
ADRのメリット
- 裁判のように白黒の決着をつけるのではなく、当事者同士の話し合いで解決できる
- 裁判のように内密情報を法廷で公開しなくて済む
- 手続きが簡易で迅速に進められる
- 利用前に費用の目安を通知してくれる
- 騒音トラブルに詳しい専門家の知識とノウハウがフル活用される
ADRのデメリット
- 相手が応じなければ手続きが開始されない
- 話し合いの途中で相手が離脱する、もしくは内容に同意しなければ不成立になる
- 合意内容に強制力がない
ADRを利用したい場合は、まず法務省の「かいけつサポート」のページを閲覧してください。そこから「かいけつサポート」の認証を受けた民間ADR事業者の情報や事務所の所在地、取り扱う紛争の分野・範囲を探すことができます。
ADR(かいけつサポート)を利用する前にしておくとよいこと
- 相手の正確な連絡先を確認しておく
- 自分の言い分をしっかりと整理しておく
- どのような解決を望んでいるのかしっかりと整理しておく
いざというときに「引っ越し」も考えておく?
考えたくないことですが、もし今の騒音問題がずっと続くとしたら・・・
選択肢として引っ越しについても考えておくほうがいいでしょうか?
これは今の住まいが賃貸か分譲かなど、種々の要素が関係してきますので難しいテーマだと思います。
ただ、そこまで深く考えることなく「もし引っ越しするとしたら」くらいの感覚で調査だけはしておくとよいかもしれません。
調べるだけならお金はかかりませんし、調べること自体が楽しくなるかもしれませんね[/chat]
私事ですが、以前に騒音問題で悩んでいたとき、ワンコインで買える小物が大きな助けになりました。その小物とは「耳栓」です。
さいごに
騒音問題に悩まされているときは、冷静に物事を考えるのが難しくなります。
しかしそんなときだからこそ、あとになってから「しまった・・・」とならないよう、一歩立ち止まって行動するようにしましょう。
残念ながら「こうすれば確実に騒音がなくなる」という方法はありません。それでもベストを尽くして、少しでも快適な生活を取り戻すことができるよう動いていきましょう。
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